不動産売却相談室

Vol.31「共有名義の不動産は売却できますか?方法や注意点を教えてください」

不動産の模型を手渡す人

家を複数人で相続した場合や、夫婦共有名義で家を持っている場合など、一つの不動産を共有名義で所有している場合があります。

共有名義の不動産は、活用するにも制限があるため、「活用できていないから売却したい」「売却の仕方が分からない」などお悩みの方もいるのではないでしょうか?

さらには、「他の共有者と連絡が取れず売却できない」といったことから、空き家として放置されている不動産もあります。この問題に対応するため、2023年4月1日に施行された民法改正にて、ルール変更が行われました。

今回の記事では、共有名義の不動産の売却方法について、それぞれのメリット・デメリットを解説。さらに、民法改正によって変更された共有不動産売却の手順についても紹介します。

共有名義の不動産とは?

「共有名義」とは、一つの土地や不動産を複数人が共同で所有している状態のことです。共有名義となる背景には、夫婦が共同で住宅を購入したり、兄弟姉妹が相続で親から不動産を受け継いだりするケースがあります。

共有持分とは

共有持分とは、共有不動産において、各共有者が持つ所有権の割合を指します。この割合は、土地や不動産を購入した際の費用負担や、相続した時の相続割合によって決まります。例えば、夫婦で住宅を購入し、夫が6割、妻が4割を負担した場合、それぞれの持分割合も夫が6割、妻が4割となります。

持分割合は、所有している土地や不動産の物理的な割合ではなく、あくまで権利の割合です。そのため、土地や不動産を売却したい場合は、権利を持つ全員の同意を得なければなりません。

共有持分は売却できます!

共有名義の不動産を売却するには、共有所有者全員の同意が必要です。

その一方で、自己持分のみであれば、あくまで「権利の売却」のため、他の共有者の同意がなくても売却することができます。とはいえ、共有で所有している不動産の権利を勝手に売却してしまうと、他の共有者に迷惑がかかったりトラブルに発展したりする可能性があります。

共有不動産の売却方法

共有不動産は、意思決定に複数人が関わるため、売却するにも協議やトラブル発生等で時間がかかりがちです。スムーズに売却するためには、どういった売却方法があり、どの方法が自分の状況に適しているかを見極めて、行動に移すことが賢明です。

売却方法を4つご紹介します。

1.共有者全員の同意を得て不動産全体を売却する

共有者全員に相談し、全員の同意を得て共有名義の不動産を一括して売却する方法です。

売却したお金は、各共有者の持分によって分配されます。例えば、Aさんが6割、Bさんが4割の持分で所有している場合、売却代金も同じ割合で分配されます。

あらかじめそれぞれの持分を明確にしておけば、現金化した後の分配も分かりやすいです。

ただし、一人でも反対すると売却ができなくなるため、注意が必要です。

メリット

  • 売却手続きが一度で完了し、売却後にかかる費用や収益も持分をもとに配分されるため、トラブルが少ない。

デメリット

  • 共有者全員の同意が必要なため、一人でも反対すると売却ができない。
  • 共有者が多いほど、全員の意見をまとめるのに手間や時間がかかる可能性がある。

全員の同意が必要なため、全員の意思を確認する必要がありますが、同意をスムーズに得られそうであればトラブルも少ない売却方法です。

2.他の共有者に自分の持分を売却する

自分の持分だけを他の共有者に売却する方法です。この場合、買い取る共有者が不動産全体の持分を増やすことになります。

例えば、共有者が2人だった場合、Aさんに対してBさんが自分の持分を売却すれば、Aさんの単独名義になるため、Aさんは不動産を自由に活用できるようになります。双方の利害が一致していれば、スムーズに話が進みやすい売却方法です。

前述した通り、自分の持分のみであれば他の共有者の同意なく自由に売却できます。

そのため、他の共有者に売買する場合も、買い取る相手と話がまとまれば売却可能です。しかし、共有者が複数いる場合は、誰に売却するか考える必要があります。「持分を増やしたい、他の共有者から買い取りたい」と考える共有者が複数いた場合、後々「なぜ自分に買い取らせてくれなかったのか」とトラブルに発展する可能性もあり得ます。

メリット

  • 双方にメリットがあれば、共有者間での合意が成立しやすく、トラブルを防ぐことができる。

デメリット

  • 誰に売却するかの合意が難しい場合、交渉が長引く可能性がある。

相続した物件で共有者が身内の場合は、個人間での売買になるケースが多いです。スムーズに話が進みそうに見えて、大きなお金が動く取引により、後々のトラブルになるケースもあります。トラブルを防げるよう不動産会社に間に入ってもらい、売買契約手続きをするのが安心です。

3.持分割合によって分筆

共有名義の不動産が土地のみの場合は、土地を分筆することができます。分筆とは、ひとつの土地を複数の区画に分割し、それぞれを独立した土地として登記し直す手続きです。これによって共有状態を解消し、各共有者が自分の持分に応じた土地を単独名義にして自由に活用・売却できるようになります。

メリット

  • それぞれが単独名義になることで、土地の管理や売却が容易になる。

デメリット

  • 土地の測量や登記など、手続きに時間と手間がかかる。
  • 分筆したことで土地が狭くなったり、正方形や長方形以外のいわゆる「不整形地」になったりして売却が難しくなる可能性がある。

土地家屋調査士に依頼を行った後、登記手続きを行う必要があるため、時間と手間がかかる方法です。また、土地のみの場合に可能な方法であるため、家屋が建っている場合は使えない点に注意が必要です。

4.自分の持分のみを買取業者に売却する

共有不動産のうち、自分の持分のみを第三者に売却する方法もあります。共有持分の買取を行う業者に依頼することになりますが、共有不動産の一部の持分だけでは自由に活用できないため、売却価格が安くなります。さらに、買取業者が他の共有者に対して売買を持ちかけトラブルに発展する恐れがあるため、売却前に他の共有者にも相談するとよいでしょう。

メリット

  • 自分の持分を早急に現金化できる。
  • 他の共有者の同意が不要であり、自分の判断で売却を進められる。

デメリット

  • 新たな共有者が加わることで、不動産の管理や意思決定が複雑化する可能性がある。
  • 売却価格が安くなる。
  • 他の共有者との関係が悪化するリスクがある。

売買額的にも、共有者同士の関係性を考えても、この売却方法はあまりおすすめできません。

民法改正により共有不動産の管理はどう変わった?

近年、空き家の増加が問題になっていますが、空き家を生む原因として「共有名義の不動産管理の複雑さ」も挙げられています。そのため、2023年4月1日に施行された民法改正にて、共有物に関してもルール変更がなされました。

共有物に関するルール改正が行われた背景

親から子へ不動産を相続した場合、相続人それぞれに持分が設定されます。その後、子から孫へさらに相続された場合、子の持分がさらに孫に分割されるため、相続すればするほど共有者が増え、持分が細分化されていきます。そのため、持分の分配が複雑化したり、連絡が取れない共有者(所在不明者)がいたりと、管理や売却のための同意が得られないケースが出てきます。

結果的に、共有物の管理が行われず、放置された空き家を生んでしまうケースが問題になっていました。

民法改正では、こういった「共有物の管理の難しさ」を生んでいた共有物の変更・管理の規定を、社会経済情勢の変化に合わせて合理的なものにするための変更がなされました。

売却のみならず、道のアスファルト舗装や建物の修繕工事など、共有物の変更・管理・保管に関わる規律も整備されました。

それでは、民法改正の中で「共有物の売却」に関わる変更点を抜粋してご紹介します。

所在不明の共有者がいる場合も、手続きを踏めば売却が可能に

これまでの民法では、共有名義不動産を売却したい時、共有者の中に所在等不明者がいると「全員の同意」が得られないため不動産全体の売却が不可能でした。

民法改正後は、裁判所の決定によって、申立てをした共有者に、所在等不明共有者の不動産の持分を譲渡する権限を付与する制度が創設されました。(新民法262の3)

これによって、所在不明者以外の共有者が全員同意すれば、共有名義不動産の売却が可能になりました。

 

売却する場合は、以下の条件があります。

  • 所在等不明共有者以外の共有者全員が持分の全部を譲渡すること
  • 不動産全体を第三者に譲渡するケースでのみ行使可能
  • 所在等不明共有者の持分は、直接譲渡の相手方に移転(申立てをした共有者がいったん取得するものではない)
  • 一部の共有者が持分の譲渡を拒む場合には、譲渡をすることができない
  • 所在等不明共有者は、譲渡権限を行使した共有者に対する不動産の時価相当額のうち持分に応じた額の支払請求権を取得(実際には供託金から支払を受ける。実際の時価に応じた額が供託金より高額である場合には、別途訴訟を提起するなどして請求可能)
  • 遺産共有のケースでは、相続開始から10年を経過しなければ、利用できない(新民法262の3Ⅱ)

 

例えば、親の死亡により、子である長男(A)、次男(B)、三男(C)の3人に土地が相続されました。長男(A)、次男(B)は土地の売却に同意していますが、三男(C)が所在等不明であったため、これまでの民法では売却ができませんでした。

民法改正を受けて、長男(A)の申し立てにより土地全体を第三者に売却するケースについて説明します。

 

この申し立て手続きをする手順は、以下の通りです。

手順

手続き内容

補足

1

Aによる申立て・証拠提出

  • 管轄裁判所は不動産の所在地の地方裁判所
  • 所在等不明の証明が必要

2

3か月以上の異議届出期間・公告の実施

3

時価相当額を持分に応じて分けた額の供託

時価の算定にあたっては、第三者に売却する際に見込まれる売却額等を考慮

4

Cの持分の譲渡権限をAに付与する裁判

5

A・B→第三者へ土地全体を売却

誰に、いくらで譲渡するかは、所在等不明共有者以外の共有者の判断による

参考)法務省 民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について

新潟で不動産売却を考えるなら越後ホームズに相談を

今回は、共有名義の不動産を売却する方法についてご紹介しました。共有不動産の売却には共有所有者全員の同意が必要なため、自分一人で所有する不動産を売却するのとは違った手間がかかります。

共有者は身内であることも多いです。不動産売却のやり取りの中で金銭トラブルや関係性の悪化などモヤモヤを残さないためにも、不動産会社が間に立って売買契約を進めるのが安全です。

 

新潟で不動産売却を検討している方は、越後ホームズまでどうぞお気軽にご相談ください。分からない点や疑問に思う点に不動産の専門家がわかりやすくお答えします。

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